プロレス多事争論「劇薬」

 今年、暴走王こと小川直也がプロレスラーから引退し、そのあとで「1・4事変」を振り返る「証言1・4 橋本vs.小川 20年目の真実」が出版されたが、あの事件はアントニオ猪木が投下した「劇薬」であり、劇薬の副作用で、新日本そのものを潰す寸前にまで至った事件でもあった。

 猪木はなぜ「劇薬」を投下したのか、あの頃の新日本プロレスだけでなく、プロレス界全体が新しい団体という文化が生まれようとしており、猪木の手から離れようとしていた。

 猪木は時代の変化に歯止めをかけるために小川直也という劇薬を使い、「1・4事変」を起こし、新日本プロレスだけでなくプロレス界全体を自分の考える秩序で変化に歯止めをかけ、自分の敷いたレールに無理やり乗せようとしていた。まさしく「1・4事変」は猪木のエゴから生み出されたものだったのかもしれない。

 しかしその結果、猪木は時代の流れや変化に歯止めをかけることが出来なかった。時代の流れに逆らった猪木は、いつの間にか時代から取り残された。それが猪木が「1・4事変」で投下した劇薬の結果だった。

 橋本真也は亡くなり、小川直也はレスラーから引退し、猪木も「忘れたな」とぼけることで「1・4事変」の真実は本人の口からほとんど語る事ないだろう。ただ言えることは猪木に破壊されたとしても新日本プロレスだけでなくプロレスは逞しく生きている。それが全てではないだろうか・・・